ガバナンス

ガバナンス2010年6月号

ガバナンス2010年6月号

おやじくさいと云う勿れ。
コラムとか連載小説が意外に面白かったりするんです。


まちおこしに和紙か…。無理だね。マーケットの規模が小さいよ。まあ、チマチマやるんだったらいいけど…(中略)。何か事を起こすには、まず、ミッションとビジョンが必要だ。マーケットの調査をして、目標を定め戦略を立てなきゃならん。(中略)おまえな、昔はよく一緒に遊んだけど、いつまでもこんなところでくすぶっていてはダメだぞ。見てみろよ、ここは何もない所だろう。早く見切りをつけて、どうだ、都会へ出て再就職をしないか」


啓介は落ち込んだ。慎一は大都会で華々しく活躍している。それにひきかえ、自分はこんな田舎で悶々としている。

啓介は慎一と会ってから、しばらくの間、ふさぎ込む日々が続いた。こんな古びた和紙小屋で、自分ひとりがまちおこしに躍起になっているだけだ。それに果して成功するか、その勝算もない。


いっそ都会に出て就職をする方が、慎一のようにカッコよく仕事ができるかもしれないし、その方がやりがいもあるかもしれない。しかし、そんな風に思って都会に出て行った若者がたくさんいる。その結果、この地域が寂れてしまった。吹雪川という自分が生まれたふるさとに愛着もあるし…。

「どんな和紙がいいかのう」
老人が和紙を漉きながらポツンと言った。
「えっ」
啓介はふと我に返った。


「今の若い連中は、どんな和紙が好みなんじゃ。(中略)和紙は水に弱い。濡れると破れてしまうのが難点じゃ。そこを何とかしたいと思うとる。いろいろと試してみるが、なかなかうまくいかん。和紙の表面に薄い膜をつくれば、水に強くなる。けどな、何で膜を塗ればいいか、まだ、見つけられておらん」


啓介は体が震えるのを覚えた。すべての時間が止まってしまったような和紙小屋だが、この老人の時計は未来に向かって時を刻んでいる。