『東京都市計画物語』

東京都市計画物語 (ちくま学芸文庫)

東京都市計画物語 (ちくま学芸文庫)

都市計画の第一の課題は、より快適な市民生活を可能にするインフラ整備(幹線道路、公園など)である。幹線道路の整備に象徴される”権力的な”都市計画を批判し、下町のコミュニティと人間臭さ、赤提灯のある路地空間の魅力を高く評価し、水辺の回復を主張する人が少なくない。しかし、幹線道路と路地は文字通り、表裏一体の関係にあり、路地が生き生きとした魅力ある生活空間であり続けるためにこそ、幹線道路に代表されるインフラ整備が大切である。明治神宮の森と表参道のケヤキ並木という骨太のインフラがあればこそ、ブラームスの小径など周囲のお洒落な街が出来上がったのであり、渋谷の戦災復興事業と代々木公園があればこそ、回遊性のある若者をひきつける賑わいが誕生した。

  • なぜ、山手線の内外に今日、防災対策が必要な木造密集市街地がひろがっているのか
  • なぜ、JRには駅前広場があるのに私鉄は広場がなく道路が狭いのか
  • なぜ、廃校となった都心の小学校の隣に小さな公園があるのか
  • なぜ、下町の堀や川が埋め立てられたのか
  • なぜ、同じ下町でも台東区墨田区は道路が整然としており、向島、葛飾区は狭い道が曲がりくねり、公園もない場所が多いのか

(中略)
これらはいずれもこの70年の東京都市計画の正負の遺産がもたらした結果の一部である。