10宅論

完。

住宅の空間は、現在において、住宅以外の他の空間のコピーとして作られているーこれが本書の底に流れるメインテーマである。ワンルームマンション派はホテルの空間のコピーであり、ペンション派はペンション、カフェバー派はカフェバー、そしてクラブ派は銀座のクラブのコピーだという図式である。

ある集団はある固有のメディアを持っていて、そのメディアが「場所」=象徴作用のコードを規定し、その「場所」のしきたりに基づいてその集団の住宅のスタイルが決定されるという構造である。

『あの人は買った家に住んでいる』という言い方は、労働階級の口から出れば、たいしたものだという賞賛の気持ちだが、上流階級が言えば、たいしたことはないという軽蔑の気持ちを表している。上流階級は何世代にもわたって、同じ『家』に住むのが普通だからであろう。つまり、調度や銀器を遺産として受け継ぐように、家も受け継ぐわけである。