逝きし世の面影

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

他国民を研究するにあたっては、もし可能ならば無色のレンズをとおして観察するようにしなくてはならない。とはいっても、この点での誤診が避けられないものであるとするならば、せめて、眼鏡の色はばらいろでありたい。そのほうが、偏見の煤のこびりついた眼鏡よりはましであろう。民族学の研究者は、もし公正中立の立場を取りえないというならば、当面おのれがその風俗および習慣を研究しようとしている国民に対して、好意的かつ肯定的な立場を取りすぎているという誤診を犯すほうが、研究戦略のうえからも、ずっと有利なのである。//わたしはたぶん、ばら色の眼鏡をとおして事物を見るという誤診を犯しているのかもしれないが、かりにそうだったとしても、釈明したいことは何ひとつない。

親日家のモースが、あまりにも日本人に対して盲目的だと批判された時にこう反論したそうです。